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初仕事(延長戦)

〜 技術者の資格 〜




困った、いや、困った。
何が困ったって、まず例のエラーのことだが要するに原因が不明なのだからどう直せばいいのかがわからない。
そしてそれ以上に困ったのは今回の進行状況に何を書けばいいのかわからない。
なぜかと言うとこのとき自分にできたことといえば、それは果てしない

試行錯誤

ただこれだけだからだ。
実際何をしていたのか、そんなことも憶えていない。
ひたすら試行錯誤の繰り返しだ。
普段はあまりしない残業を繰り返す。
休日出勤も朝から夜まで。
そして・・・・残業代はおあずけ。
初仕事(前編)の最後に書いた言葉

「残業代はおあずけです。」

というのはウケ狙いではない。
まぎれもない事実なのだ。
もっと正確に言うならば、月の残業時間が10時間を越えた分はいったん会社が預かる。
後に余裕が出たときに払う、ということらしいのだ。

10時間の壁など秒速でクリアしていたオレだがそんなことは関係ない。
つい先日まで動いていたものが昨日になって突然エラーで止まってしまうのだから。
しかも止まるタイミングは毎回違う。
何がなんだか、どうすればいいのかぜんぜんわからないのに、それでも残業や休日出勤をしなくてはいけなくて、それなのに時間外手当が支払われないなんて、あなた、そんなことって・・・・・。

もう・・・このオレの気持ちを伝えるのには・・・・ポエムしかない(いつもいつもすいません)。



迷宮、永久、請求


私は迷い込んだ、迷宮
階段を上ればそこは海の底
階段を下りればそこは雲の上
右も左も、後ろも東も
何ひとつない宇宙空間
エラーだけがそこにいる。

私は抜け出せない、永久
おそらくここは時間もない
太陽の存在は意味を成さない
壁を見ても、目を閉じても
エラーの文字が浮かび上がる
網膜に焼きつけられた。

私は声高らかに、請求する
定時以降の残業代
土日出勤の休出代
社員として、サラリーマンとして
出すぎた夢は持たないが
堅実な日常が欲しいのだ。



この果てしない悲しみ旅行。
そこからオレを連れ戻しに訪れた人がいる。
あの、研修でお世話になった、というか嫌そうなフェロモン全開の、あの先輩だった。

オレが絶望の淵で闇雲にのた打ち回っていた間、その先輩は実に丁寧にエラー情報をかき集めていた。
どの状態で、何が原因でエラーが発生するか、その可能性を徐々に狭める作業をしていたのだ。

そして気の遠くなる検証の末、最後は勘もあったろう。
ついに、ついに原因の特定に成功したのだ!

それからは実にスムーズなものであった。
年内には終わらなかったものの、年が明けて数日の後に、プロジェクトは・・・完結を迎えた。
オレは技術者として実に大事な教訓を得た気がした。
結局、オレの数日間にわたる悪あがきにはなんの価値もなかったということ。
それは全て先輩一人の、冷静な分析と合理的な閃きのおかげであったのだ。

「なるほど。」

オレは心の中でつぶやいた。
残業代、休出代、そのような金の出所は結局会社の利益の元に支払われるものであり、その利益を作ったのは今回は先輩であったのだ。
オレにもらう資格は無いってことか。

希望だけを武器に突き進んできたオレの心が「責任」という盾を手にしたプロジェクトであった。


初仕事...終了!


今日の一言

それでも普通は払うでしょ?



経歴書にウソは無い
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