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眠らない街とオレ(中編)


さて。
知ってる店など一つもないオレ。
しかし心配などない。
周りを見渡せばキャッチの兄ちゃん達が山ほどいる。
どうも今日はあまりにも寒くて客足も少ないようだ。
これなら値段の交渉もできそうだな。
パチスロに使う金を惜しいと思ったことはないがキャバクラ代は惜しいからな。

さっそく一人の兄ちゃんが話しかけてくる。
何々?5千円?
高いって、それ。
4千円ならいくよ。
んで外は寒いから時間も長めにしてよ。

なんと交渉は一発でOK。
しまった、そこまでヒマだったとは。
こりゃ3500円まで値切れたな。
まあいい、今日だけは金にゆとりがある。
オレは余裕で店に入っていく。
もちろんこんなに強気なのは酔っているからだ。

そんなオレを出迎えたのは。
なんと、セーラー服の女の子達。
いまどきセーラーかよ。
さらにオレについた子に年を聞いたら26歳。
いや〜お姉さんがんばってるな〜。

この辺ですでに気付いてしまった。
駄目だ、心の底から楽しめない。
なぜならオレはこの業種でのバイト経験が非常に長かった。
だからどうしても店側の視点で物事を見てしまうのだ。
終始オレは横にいる女の子を退屈させまいと頑張って喋った。
女の子も酒をもらわないと仕事ができてないと判断されるから飲ませてやった。
そうやって必死で喋ってるうちに時間がきて会計となる。
そして会計が済んだらとっとと店を出た。
金も払わずにダラダラと店に残る客は従業員として非常にうっとうしいからだ。
そして1件目終了。
はっきり憶えてないが合計6、7千円(女の子の酒代含)。
なんだオレ?何しに来たんだ?

いかん、このままじゃ駄目だ。
何にも楽しくないぞ。
なんとかしないと・・・。
そう思いまたブラブラと歌舞伎町を徘徊し始める。
幸いキャッチはたくさん声をかけてくる。
だが何処も一緒だろう。
オレが本当に楽しめるようなところはないものか。
と、そんなとき。

「ブラザー!コレカラ ドコ イクノ?」

前からこの辺りは黒人男性のキャッチが多いと思ってた。
その一人がオレに声をかけてきたのだ。
いきなりブラザーですか。
オレは少しだけ楽しくなった。

「ニホンジン イルヨ。ミルダケ オーケー!」

オレが何も喋ってもいないのにまくし立てるように喋ってくる。

「ゴセンエン ドウデスカ?サービススルヨ。」

新鮮だ。
これが本当の営業といえるのではないか?
まったくオレに気まずさを感じさせない。
さっきの店の女の子とは大違いだ。


オレ:「ブラザー、あんたと飲ませてくれ。」


本当はそう言いたかったが彼も仕事だ。
ここはぐっとこらえてとりあえず彼の店を見に行くことにした。
彼に最大の敬意を表したのだ。

オレ:「オーケー、見るだけ。見るだけオーケー?」

彼の後を20歩程歩いたオレは・・・。
すぐに帰りたくなった。
だってすごい寂れたビルのボロいエレベーターに乗るんだもん、ブラザー。
絶対おかしいってこれ。

オレ:「ノーノー、ブラザー。やっぱり今日はいいよ。」

オレは引き返して別の店に行こうとした。

ブラザー:「オーケー、モウイッケン アルヨ。コッチネ。」

ブラザーは即座に機転を利かせてオレを別のビルへと連れて行こうとする。
なんか必死だ
ハハ、やっぱブラザーおもしれぇな。
こいつと飲みてぇ。
オレは仕方がないのでもう一軒見に行くことにした。
というか既にブラザーの売り上げに貢献してやろうかな、という気にもなってきている。

次の店のビルはまだきれいだ。
そして店はビルの地下にあった。
とりあえず店に入ってみたものの奥の方がよく見えない。
だが数組の客はいるようだ。
そんなにヤバイ店というわけでもないだろう。
もういいや、ブラザーのためにここで飲んでやるか。

オレ:「オーケー、5千円だったっけ?」

あ、しまった。
値切るの忘れてた。

オレ:「やっぱ4千円にならない?」

ブラザーはやはりプロだ。
オレがもう入る気になってるのを察知したようだ。
首をただ横に振る。
まあいいか。
オレは5千円を店の人間に手渡し、奥へと入っていった。



・・・・って・・・・。



日本人なんかどこにも見当たらないんですけど・・・・・。

後編へ続く


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