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大東京単身赴任(第9部)

〜 研究者の宴 〜



英会話のゴタゴタも無事何事もなく終わった。
東京での暮らしも慣れてきた。
何となく安定しているのだろうか。
ここでこの安定に乗っかっているのもさほど悪くはない。
ただ、やはりあのときの自分が描いた目標がある。
目標の形は少しずつ変わってきたが再度それを確認しよう。

まず、家庭のある人間としてはやはり仕事だけではだめだ。
生活がある程度安定していること。
これが最優先事項である。
だが、知っての通りこれは実にスムーズに実現してきている。
オレの小遣いも月3万から5万にあがった。
オレは前より裕福になっているはずだ。
しかしなぜかここ2日の食事は貧困そのもの。
2食160円のインスタントラーメンを1食ずつ2日にわけて食べた。

なぜ?!

いや、理由は言わずもがな。
久しぶりの一人暮らし、それも見知らぬ土地。
オレは実に開放的な気分になっている。
そしてそんなオレが何をするのかというと・・・。
そう、ギャンブルしかない。
明日、来週の小遣いが振り込まれるまではもう何もできない。
小遣いを週払いにしているのはこんなオレの性格をよく知る嫁の手柄だろう。
そのおかげで、現状としては生活面での不安はさほどない。

次に仕事だ。
これについては考えることがたくさんある。
まず、自分の目標を再確認することからはじめなければならない。
オレのもともとの目標はプログラマとして研究職のようなことがしたい、というものだ。
例えばOSとかコンピュータのコアな部分にかかわるようなパッケージ製品。
さらに言えば周りがあっと驚くような新技術。
そのようなものの製作に関わるだけでなく、そう、大成したい。
同業の人たちまでもあっと驚かせるような発想、技術を身につけたいのだ。

だが、最近思う。
オレは性格的にこのような研究職に不向きなのではないか?
このような職種で大成する人たちの多くは趣味と仕事がほぼ一致しているようである。
要するに会社でやっているような研究に関わる書籍を家でも楽しく読める人たちだ。
それが何より面白く感じるという人たちだ。
で、オレもそのような傾向が多少はあるのだ。
今頑張って勉強しようと思っているものの書籍ならさほど苦にも感じない。
とは言っても、苦にならない程度では駄目なのだ。

以前Linuxの核になる部分を一人で作り上げたリーナス・トーバルズの本を読んだ。
彼はLinux作成中の数ヶ月は飯と睡眠とLinuxしかなかったという。
その飯が美味いとか不味いなどということには一切興味がなかったのだそうだ。
とにかくLinuxを作るのが楽しくてしょうがない、という感じだ。
オレはこれを聞いて何かに似ている、と思った。
オレにもこのような時間がある、と。
そう。

ビール飲みながらマンガ読んでる時間だ。

このマンガの代わりに技術書を読むことができれば・・・。
オレにも研究職への道が開けてきた。
これは確かめなければ。

ある日、オレはいつものようにビールを用意した。
つまみは安売りしていたアジを自分で切って刺身にしたものだ。
そして、横にあるのはいつものマンガではない。
1000ページからなるLinuxサーバ構築の本だ。
リーナス、オレもあなたに続こうではないか。
そんな気持ちでオレはビールをグイと飲んだ。
つまみに箸をつけた。
美味い。
そしてもう一度ビール。
さらにつまみ。
さて、そしていよいよ。
Linux本の目次を開いた。
さて、どこを読んでやろうか。
Linuxカーネルのアップデート。
ほう、前から少し気にはなっていたところだ。
そんなことを考え、またグイ。
よし、今日はここを読んでみよう。
ページを開き、いよいよ宴は本番を迎えた。

・・・・・ふむふむ、とLinux。
グイッとビール。
ツーンとわさびのよく効いた刺身。
またビール、そして刺身、さらにLinux。

ビールに刺身にLinux

なんかのコマーシャルにでも使えそうな名文だ。
10分ほど目を通してオレは感じた。
これか、これがあの研究者たちの世界か。
リーナスの感じた世界か。

リーナス・・・・。



読んでられるか、こんなもん!!


だって無理!
オレには絶対無理!!!
考え直さなきゃ。
オレの夢はここにはない。

すまない、リーナス。
君の作ったLinuxは今オレの目の前でルパン3世にとって変わられた。

続く...


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