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大東京単身赴任(第11部)

〜 おい、そこのお前! 〜



今のオレの仕事、それはツールのプリセールス。
仕事内容は大きく2種類に分かれる。

1.ツールの使用に関わること
2.ツールの販売に関わること

まず1.ツールの使用に関わること。
これはそのツールの使用法、動作環境などの知識を身に着ける。
これについては開発経験のあるオレにとってさほど障害はなかった。

そして2.ツールの販売に関わること。
これは自社のツールの導入効果、長所などを売り込む。
主にPower Pointを使用したプレゼンテーションだ。
これがきつい
Power Pointすらほとんど触ったことがなかったからだ。
でもいつかやらなきゃならない。
まあ、その日が来てから慌てればいいか。
気楽なオレ。

そういう準備を怠る人間の下に、突然その日はやってくるものだ。
急遽3日後にプレゼンテーションをしてくれ、と言われた。
参加者は?
えっ、10人以上?!
大半はプロジェクトリーダーだって?!


3日後、オレは営業の人と一緒に説明会場に入っていった。
そこは某大企業のグループ会社である。
出番待ちの時点で圧倒されてたオレはかなり緊張していた。

落ち着け、前日のイメージトレーニングを反復しよう。
イメージトレーニング。
それはオレが見てきたプレゼンのイメージを根底から覆すウルトラCだ。
オレは何人かのプレゼンを目にしてきて、一つ思ったことがある。
それはつまらんということだ。
面白くないし、長いし、眠い。
何しろ1時間以上もの長時間にわたって集中してなければならない。
これは恐ろしく至難の技だ。

バンドでステージにあがっていたオレは知っている。
よっぽど気に入った曲でもない限りお客の集中力は5分も持続していない。
オレの作った曲がショボイと言われればそれまでだが・・・。
経験上、お客が比較的聞いているのはほんの数ヶ所。
・曲の出だし1分
・1回目のサビ
・個人的にいいな、と思う部分

これくらいだろう。
これをプレゼンに置き換えるとこうなる。
・出だしの5分〜10分
・実際にツールの実演に入って10分
・個人的に興味のある分野の話(開発者→技術、マネージャー→コストなど)

間違えても自分の話をずっと相手が聞いてくれていると思わない方がいいだろう。
これは聞き手が悪いのではない。
聞き手を惹きつけることのできない話し手が悪いのだ。
そこでオレは発想の転換を用いた。

聞かねぇんなら話さなけりゃいい。

特に商売っ気が見え隠れした
「弊社ツールは大変優れておりまして・・・・」
なんていうのは向こうも飽き飽きしている。
そんなところに本音がないことくらい知ってるし聞く気もしない。
だからそんなところはざっと削ってしまえ、というわけだ。
大体配ってる資料に全部書いてんじゃねぇか。
それをただ読むだけなら人間がここにくる必要もないってもんだ。

オレのプレゼンは
・楽しく
・短く
・わかりやすく

これをモットーとしよう。

前日こんなイメトレを散々していたのだ。
思い出しているうちにまた気分が少しノッてきた。
フフフ、みなさん。
もうすぐ、このセミナールームに教祖が誕生しますよ。
聞かなきゃ損、みんな集まれ。

そうやって思い出し笑いしているうちにオレの出番が来た。
オレは一番前に進み出て一礼すると参加者達をざっと見渡す。


・・・えっと。

みんなコッチ見てるね・・・・・。

全員オレより歳も経験も積んでそうだし・・・。




そう、この瞬間オレは。



ガチガチに緊張した



と、とにかく始めなければ。

「ただいま紹介に預かりました。」

「わ、わらくし(私)・・・・。」


いきなり噛んだ。
そりゃそうだ。
いくらイメージトレーニングしたといってもだ。
「私(わたくし)」なんて言葉ほとんど使ったことないし。
駄目、無理。
お客の様子を見ながらアドリブなんてできるわけがない。
この時点でオレの敗北は決定。
その後オレは、ただ呆然と資料の棒読みを断行。
延々と画面だけをみて喋り続ける。

30分位してようやく少し余裕が出てきた頃。
ふと、客席を見渡すと・・・・1人、2人寝てやがる。

おい!こら!寝るな!!!

と一瞬は言いたくもなった。
だがさっきも書いたとおり悪いのは話し手、つまりオレだ。
しっかりと敗北を噛み締めて、明日の勝利に向かって出直そう。

続く...


今日の一言

でも寝るな!!!

老化なのだロウカ
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