オレはM氏の指示によりプロフィールを書いている。 あの某外資系企業に提出するためだ。 あまりこういうものを書く機会がなかったオレだ。 正直言ってなにを書いたらいいのか分からなかった。 自分の簡単な自己紹介を書くにとどまっていた。 しかし、M氏は終始オレにこうアドバイスする。 M氏:「強気にできるって言えばいいんだよ。」 M氏:「入ってしまえばクビには出来ないんだから。」 す・・すごい。 そのやり方が色々な会社で多数の悲劇を生んでいるのは間違いないだろう。 しかし、逆に考えればどうか。 オレが常人以上の努力を積み重ねるのだ。 そして入社時のハッタリを現実にしてしまう。 そうなると今のウソはウソでなくなる。 八方丸くおさまるというものだ。 しかし、残念ながら世の中には出来ることと出来ないことがある。 ここまでなら努力でいける、というラインを見誤ってはいけない。 それはつまり悲劇が起きることを意味する。 周囲からは期待外れの眼差し。 大口叩いた新人は今や誰とも目を合わさない。 寂しそうな背中は皆に「すいませんでした」と言っているようだ。 なんてことになったらどうする。 いくら年収がよくてもそんな仕事環境はまっぴらごめんだ。 ストレスで髪の毛が全て抜けてしまうわ! ただでさえずっと頭を使わない生活をしていたオレ。 急に膨大な知識を詰め込もうとされた脳みそがビックリしたのだろう。 プログラマになってからというもの白髪が大量に増えてしまった。 今やオレの使うブリーチは脱色だけではダメだ。 カラーリングも同時にしてくれないと白髪が目立ちすぎる。 とにかく、ハゲないためにもハッタリは慎重にかます必要がある。 オレは自分の自己紹介のあとに仕事に対する適正を書き綴った。 まず書いたのはこうだ。 「自分は御社の要望に大部分において応えられます。」 そしていくつか至らないと思われる部分についての考察を一つずつ書いた。 それらの概要は文末だけピックアップすれば分かってもらえると思う。 「そう時間をかけずとも理解できるものと考えています。」 「問題無いと思っています。」 「それほど大きな差はないと考えています。」 「実現してみせるという意気込みはあります。」 ・・・・まあ、ようするにあれだ。 全部できるって書いちゃったよ!! 大丈夫かよ、オレ!! 「御社にとって必ず有益な結果をもたらす」 ってホントかよ!? ここまで出来る出切るって言い切ったらまるで政治家みたいだ。 逆に信用されないって。 しかしそれを読んだM氏はこう言う。 M氏:「これでいいよ。ここだけもっとこう書いたら?」 ・・・かくしてM氏のアドバイスのもと完成したプロフィールは送信された。 はぁ、よかったんだろうか。 そんな心配をしているオレを他所に状況は常に動き続ける。 すぐに返信メールが来たのだ。 そこにはこう書かれてあった。 「ネットワークの実務経験が少ないのが気にかかります。」 まあ、そりゃそうでしょう。 募集要項にはネットワーク運用・構築経験3年以上って書いてあったし。 オレは開発も勉強も何もかも含めて2年しか経験していない。 それ自体は正直に書いたから、やっぱり少なすぎたんだろうな。 ところが、だ。 次の一文が逆接の接続詞で始められていることでオレは身が引き締まった。 「しかし、会ってみる価値はあると思います。」 おっと。 面談が決定した。 続く... 今日の一言 モー限界 |