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職探しプロジェクト(番外編)

〜 メッセージ 〜



転職も決まった。
会社内ではオレが退職することが正式に発表もされた。
そんな中オレは半期ごとの全社会議に出席することになったのだ。
後に懇親会もあるしオレの送別会もしてくれる、という事情もあった。
最後に少し挨拶くらいしたいな、という気持ちが大きかったのだけど。

まず酒が入ってからのことはいつも通りアドリブで乗り切る。
会議はどうしよう。
辞めていく者がいまさら会社の方針になんやかやと口をはさむのはよくないな。
おとなしく見守ろう。
オレはそう決めた。
当たり障りない背景のような存在になろうと。

午前の仕事を終えるとすぐに出向先から京都へと帰る。
そして会社近くの大学の会議室で会議はスタートした。
まず社長の売り上げ報告など。

オレは自慢ではないが一言いっておきたい。
売り上げとか純売り上げとか損益分岐点とか言われてもなんのことかサッパリわからん
だからボーっと聞いていた。
いや、聞いていなかった。
オレは自分の狙い通り正に背景と化していたのだ。

そんな時、一通りの報告も終わりフリータイムが始まった。
といっても「ねるとん」ではない。
社員が普段感じる問題点など好きなテーマを議題にして話し合おうということだ。

そこで出た議題。
我が社は人間関係が希釈である。
要するに密なコミュニケーションを取れていない。
隣の社員がどんな仕事をしているのか知らない。
他人に無関心である。
というような問題だ。
これは社長も解決すべき問題だと認識しているらしい。

オレはこの話題にピクッっと反応してしまった。
これに関してはオレもずっと抱いていたある思いがあるのだ。
だが一瞬の動きを見せたオレであったが、またすぐに背景に戻った。
あえて最後に波風を立てることもない。
無心、無心・・・・。

すると会議ではあるチームの話題が取りざたされた。
そのI氏率いるチームだけは見事にコミュニケーションが取れていると。
それがどうやったら他のチームにも波及するかという話題になっていたのだ。
I氏のことはよく知っている。
かなり個性派なので会社独特の空気にも染まっていない。
もちろんそれが問題を生むこともあるが、この面ではいい方向に作用しているのだろう。

だめだ。
オレはついに我慢しきれずに口を開いてしまった。
最後に後を濁していくのか?
いや、それはやりたくない。
慎重に、あくまでも慎重に発言しよう。
オレは自分の言いたいことをオブラートで包み、さらに小麦粉であげたように喋った。


オレ発言抜粋:
I氏のチームは基本である報告、連絡、相談がしっかりしているということですよね。
チーム全員がそれをきっちり実践できているということ。
なぜならチームリーダーであるI氏が誰よりもしっかりとそれを実践している。
だからその行動がチームに浸透しているのでしょう。


・・・・届いただろうか。
遠まわしかもしれないが、笑顔で別れたいオレとしてはこれが限界だ。
オレはこの話を各チームリーダーだけに訴えたのではない。
社長、あなたに届いて欲しいのだ。
オレの発言を一言で簡潔に述べるなら。

社長がやれば社員もやるということだ。

オレが退社時期を相談していたあの時。
就職活動に影響するから早く結果を知らせてくださいと言ったあの時。
社長、あなたは10日近くもそれをほったらかしにした。
その間、一切の連絡なしで。

その前にどうして「返事が遅れる」というメールをくれなかったのですか?
1通のメールが書けないほど忙しくしておいでだったのでしょうか。
それほど大事なことではないと思ったのなら大きな勘違いです。
あなたはいつも口うるさいほどコミュニケーションを大切にしろと言ってますよね?
でも、あなた自身が実は社員とコミュニケーションを取れていないのです。
だから社員同士もコミュニケーションを取らないのです。
自分の部下にこうなって欲しいという理想像があるなら。
あなたが、先ずそうならないといけないのです。

ふぅ・・・。
こんな言葉がそう簡単に届くのならこの会社は辞めていなかったかもしれない。
もしも将来、オレが社長になるときが来るとしたら。
その時は部下のメッセージを敏感に感じ取れる社長になりたい。


今日の一言

じゃあ、さようなら

恩返し
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