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大阪物語(第8部)

〜 前略 社長殿 〜




もう辞めたい、という気持ちしかなかった。
だからそれをまず会社の仲間数人にうちあけたのだ。
するとそれはあまりに一方的過ぎる。
いやだから辞める、ではなくまず環境を変える努力をしてみてはどうか、と助言いただいた。

なるほど、と思い直したオレは会社に対してメールを送った。

内容は会社に対しての不満が自分の許容量を超えている。
この状況が改善されないのなら退社せざるを得ないということ。

・給与
・仕事内容
・会社の体質

できれば、これらの不満を軽減しこれからも会社に貢献していきたい。
そのためにどうすればよいか、その話し合いを社長としたい。

というような内容であった。
はっきり言って偉そうだと自分でも思った。
入社してまだ1年足らずの社員なのだ。
それが社長に対して直談判して今後の進退を決めたい、というのだ。

なぜなら、このときオレには何も恐れるものが無かったのである。
クビ?大歓迎だ。
納得のいかない労働環境で仕事をし、その評価としてもらえる給料が・・・
計算しよう

178,000(月収) X 12(月) + 3 X 2(ボーナスがあったとして) = 2,196,000

年収約220万円だ。

別にいらねー。
この性格がどれほどオレの人生に害悪をもたらしてきたことか。
それは重々知っているがそれでもなお奮起したのだ。

オレはプログラマを目指すと決めたあの日、自分に高すぎるくらいの目標を設定した。
正直言ってまだよくわかっていなかったし、考えが甘かったのだ。
だが、だからといってその目標を下げるべきではないと考えている。
やはりどの世界も突き詰めると奥が深いのは同じだ。
予想以上に大変そうだというくらいで目標を下げていたらキリがないのだ。
そんなことでは何度も何度も目標を下げたあげくその最後の目標すらも達成することはないだろう。

そして、オレが何年もこのまま働いたとしてもだ。
10年後のオレは確実に自分の目標を達成していないと感じた。
確かにそれでも楽しい仲間がいて、もしかしたらかわいい子供もいるのかもしれない。
給料が安かろうと、自分の仕事に納得できないとしても

「これはこれで幸せだな」

と感じていることだろう。

だが、本当にそれでいいのだろうか。
仕事、家庭、金、仲間、その全てを手に入れる可能性は
本当に0%だろうか?

あがかなければ

そこに可能性があるなら進むべきだ。
失敗してもいいではないか。
何を恐れる必要がある。
まだ言うほど何にも持っちゃいない。
失うのはただ自分がそれに心血を注いだ時間くらいのものだ。
そしてその時間というものは何となく生きていても
同じペースで失い続けているものなのだ。


オレは社長と面会し、固い決心、熱い思いを伝えた。
社長も意外だったようだ。
確かにオレのような人生観は珍しいのかもしれない。
いや、オレとてささやかな幸福というものも望んでいる。
だが本当に欲しいのはそれではない。
プログラマという職業を自己実現の手段として得られる強烈な達成感・充実感なのだ。
気持ちは音楽に打ち込んでいたあの頃と何も変わってはいないのだ。

社長は言った。

社長:「まず始めに、ukkyo君に未払いの残業代がこれだけあるから次の給料に加えます。」

後に知ったことであるがこの未払いの残業代は社内では数ヶ月前に支払われていたらしい。
出向にでたオレの分だけ払われていなかった。
こんな機会が無ければ払わないつもりだったのではないか。
空恐ろしい・・・。
さらに社長は言う。

社長:「ukkyo君は評価しているし、これからも頑張ってもらいたいからなんとか考え直して欲しい。」

前にも書いたことだが今の出向先は会社のお得意でオレは非常に安い金額で出向しているらしい。
だから本来3ヶ月ごとに見直しされる給料もオレは1年間は据え置きだと言われた。
評価しているという社員に対しての措置が残業代未払い、1年間給料UPなし、なのか。
もし、一切文句を言わずここで働き続けていれば・・・・。
想像するだけで背筋が凍りつきそうだ。

オレは給料が上がらなければ会社を辞めるということをもう一度強調した。
会社の運営や体質に関しても口を挟んだ。
ここまでくるともうやり過ぎではなかろうかと、今なら思える。
だが、このときのオレは本当にもう、ギリギリの状態だったのだ。

言いたいことを言い、会社を出た。
後は野となれ山となれ、である。
もし会社を辞めることになれば、また職探しだ。
いいさ、何度でも再スタートしてやる。
この頃はもう、常にアドレナリンは全放出モード。
朝、目覚めると前日の脳内麻薬で二日酔いなんてことも多々ある。

やることはやった。
後は結果を待つのみである。


続く...


今日の一言

さぁ、どっからでもかかって来い!



悲しみと喜びの呪文
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