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大阪物語(第4部)

〜 ペラリズム 〜




オレはここに出向に来てようやく普通の社員として扱われるようなっていたのだ。
すなわち17万8千円の基本給をもらえるようになった。
しかし追い詰められなければ残業は全くしない主義のオレである。
この基本給はそのままオレの月収をあらわすわけなのだが、それでもようやく人並みのサラリーマンになれたという気がする。

「ここがスタートラインなのかな。」

もちろん満足はしていない。
プログラマーという言葉の響きから知的職業というイメージが連想されるのはそう特別なことではないだろう。
ようするに標準的サラリーマンよりも多くの収入がもらえるものだという思い込みがあったのだ。

ところが、だ。
初めて経験するような苦労と努力を重ね、3ヶ月の無給期間とさらに3ヶ月の試用期間に経済状況は最悪。
まさに馬車馬生活を余儀なくされていたのだ。
そして、ようやくその生活から抜け出せた。

その、その結果がだ。

学生時代のバイトより少ない給料で働かねばならないとは・・・。
まあ学生のバイトにしては稼ぎすぎていた感はあるのだが。

・・・まぁ、、、まぁよしとしておこう。
一年目でそこまで望むのは欲張りなのだろう。
とにかく今の仕事で結果を出し、オレのことを認めさせるしかない。

幸い徐々に速聴技術も身につき樫原君の言葉も聞き取れるようになった。
仕事にも支障をきたすことがなくなってきた。
言ってみれば「順調」に仕事を進められているようである。

ただ一つやりにくいのは樫原君のプライドの高さだ。
もともと樫原君もオレの少し前に研修生として入ってきたようだから技術的に大差はないはずなのだ。
技術的な話をしていても彼の方がよく知っていることもあれば、オレの方がよく知っていることもある。
で、オレは話が変な方向に進まないように知らないことは前もって知らないといっている。
そうすると樫原君は

「あっ、知らないの?」

という感じで教えてくれるのだがその言葉がどうしても

「あっ、(そんなことも)知らないの?」

に聞こえてしまう。
いや、もしかして超高速かつ小声で言ってるんではないだろうか?
人間の耳に聞き取れるギリギリの周波数でささやいてるのかもしれない。
そういった言葉の後には必ずといっていいほど不快感が残るのだ。
ここのところは今後調査の必要がある。

逆にオレは性格上樫原君の話の腰を折ってまで

「そこはそうじゃなくて、こういうことだよ。」

と教えてあげることはあまりしない。
いやしなくなったと言ったほうが正確か。
冷たいかもしれないがオレだってもうあんな思いはしたくないのだ。



ある仕事を頼まれた。
樫原君の作成した文書の内容をチェックしながら読む。
わかりにくいところや内容的におかしいところがあれば報告、修正するというものだ。

実際読んでいくと明らかに樫原君が勘違いしていると思われるところがあった。
知らなければ勘違いしやすいところだ。
ありがちなミスである。

さて、これをどうやって樫原君に伝えようか。
プライドが高そうなのは一目でわかることだ。
できるだけ刺激はしたくないのだが・・・・。

いや、いやいや。
何を言っている、ukkyo。
オレは、これを、自分の一生の仕事に選んだのだ。
これからこの業界でのし上がっていくためには多少の摩擦を恐れていてはいけない。
なにより結果を出すのが先決なのだ。
その方が彼のためにもなるし、ここは言うべきだ。

ukkyo:「あの、ここってこういう風に考えると少しおかしいですよね。」

オレは緊張していた。
どのような言葉が切り出されるのか。

樫原:「うん、そこはね。」

うん?

うん、ときた。
「そんなこと知ってるよ、わかってるけどね。」
という言葉が超高速でささやかれたような気がした。

そしてその後に続いた言葉にはオレも口を閉じるしかなかった。


樫原:「そこはそうなんだどねペラ、」

樫原:「それをするとここからペラルラ。」

樫原:「ペララル状況を考えるとラロルルペパレラ。。」

樫原:「ペピパルラロロロララルルだから、ルラピペレラララペッパレロラル。」


ukkyo「・・・・・ぁぁ。」


樫原:「でもそういう風に考えるんだったら直してもいいよ。」



誤解のないように言っておく。
これはオレが速聴技術を鍛えたあとの話である。
よほどカチンときたのか、そのオレですら理解できない超音波トークが怒涛のごとく押し寄せたのだ。
普段の1.5倍速である。
・・・・・もう、もう2度と指摘しまいと心に誓った。


続く...


今日の一言

前回とおんなじオチでごめんなさい。



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