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大阪物語(第3部)

〜 悪意のない言葉の暴力 〜




それでは早速新しい仕事にはいっていかなければ。
仕事内容はJavaでの開発だからおそらくすんなりと入れるだろう。
だがその前に仕事以上の難関が待っていたのを、実はオレも知っていたのだ。

それはオレの会社の隣の会社に登録している派遣要員の樫原君(仮名)だ。
彼はオレより一足先にここに仕事に来ていた。
オレより2、3年下の彼だが非常に濃いキャラをしておられるのだ。

具体的に彼のキャラを箇条書きにしてみよう。

・自信家
・早口でよくしゃべる
・比較的声が高い
・仕事中独り言が多い

・・・いたのではないだろうか?
あなたのそばにもこのようなタイプが。
まず間違いなく普通は嫌われていただろう。

彼がここを見ないとも限らないので先にフォローしておこう。
樫原君はよく言えば自分に正直なだけで、ただ思ったことを口にせずにはおれないだけなのだ。
とても人間臭いいい奴なのだが、それが人に伝わるまでは少し時間がかかるようだ。
例に漏れずその職場でも彼は浮いているっぽかった。
オレも彼をよく知らなかったしその頃は避けていたのだ。

その彼が先輩になるのだ。
これから色々教えてもらわなければならない。
気が重かったが、手始めに簡単に仕事に関することを聞くことにした。
たしかいくつかの質問をしたと思う。
すると驚くべきことにその何種類かの質問に対し彼は全て同じ答えを返したのだ。



ukkyo:「あの、ここはどうすればいいんですか?」

樫原:「ペラペラペラペラ・・・・。」

ukkyo:「あ、えっと・・じゃ、これは・・。」

樫原:「ペラペラペラペラ・・・・。」



・・・速くて聞き取れない・・・。
オレは夢を見ているようだった。
彼がしゃべると唇はもう残像しか見えない。
少しばかり英語を勉強したからって2ヶ国語放送の番組を副音声だけにしたときの、あの屈辱感に似たものを感じる。
オレはその時点で既にもうしゃべりたくないと思っていた。
ところどころ聞こえる単語があるだけでしっかりと意思疎通できるレベルではないのだ。

しかし、これは仕事だ。
しかももしかすれば2、3年ここで働くことになる。
これは今のうちにどうにかしなければならない。
そこでオレはある作戦に出た。
今度はオレが十分な間を置いてわざとらしいくらいにゆっくりとした口調で聞いたのだ。
うまくこのペースに巻き込んだらゆっくりしゃべってくれるに違いない。
頼む、気付いてくれ!



ukkyo:「で、、、そのやり方についてですけど、、、こういう風に・・・。」

樫原:「ペラペラペラペラ・・・・。」



ダメだ(ガクッ)

どうやら、わざとやってるのではなさそうだ。
だから一概に彼が悪いと決め付けるわけにも行かない。
だがこのままでは仕事が始められないのだ。
仕方ない。少し強硬策にでよう。

オレは今度は彼に勝るとも劣らないスピードで話し始めた。
人の振り見て我が振りなおせ作戦だ。
頼む今度こそ気付いてくれ、君の世間離れ度を!



ukkyo:「あのですねこのやり方が今ひとつつかめてないようなのですが先ずは全体像をおぼろげにでも理解していこうと・・(以下ペラペラ)」

樫原:「ペペラペラララ、ペララララララルラロルレララペラペペ・・・・・



な・・・・・。
なんと、樫原はオレの彼に迫らんとする早口に自尊心を傷つけられたのかあり得ないほどの早口で対抗してきた。

諦めるしかない。
オレはこの瞬間自分のヒアリング技術を高めるという選択を余儀なくされた。

続く...


今日の一言

せめて英会話ほどの将来性があれば・・・



ペラリズム
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