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大阪物語(第2部)

〜 16回/sec 〜




というわけで面接の数日後、今日から大阪なのである。

あまりにも突然な展開であるが逆に考えればチャンスでもある。
自分の会社の小さな部屋の中で、これまた小さな机2つを3人で共有しているような環境で何年も過ごす。
それよりもある程度大きな会社でシステマチックに技術を吸収したほうが良いのではないだろうか。
なにより自分はこの業界のことを何もわかってないのだ。
いろんなところを見て標準というものを自分なりに掴んだほうがいいだろう。

そんなことを考えながら派遣先の会社があるビルに到着。
実はこのビルは知っていた。
浪人時代に通っていた予備校がすぐ横にあるのだ。
だが、まさか自分がそのビルに出入りするようになるとは夢にも思っていなかった。
そう、当時のオレは数年後には日本武道館に出入りしているつもりだったのだから・・・。

少し感傷に浸りながらエレベーターの前へ・・・ってなに?
たくさんエレベーターがあるんですけど。
ざっと見て10台くらいか?

「すごいなー。」

田舎者丸出し。
大阪に住んでたのに。
で、エレベーターに乗ってまたびっくり。

「広いなー。」

20人位乗れるんじゃないの?
うちの会社のエレベーターなんて3人乗ったら不快感が爆発しそうになる。
大げさじゃなくトイレの個室レベルなのだ。

しかもそのスピードにも格段の差があった。
うちのトイレの感覚だとそろそろ5階かな、というくらいの間にもう20階近くきてる。
そして最後にまたびっくりする出来事があった。

最初エレベーターが混んでたから自分の行きたい階のボタンを押せずにいたのだ。
で、だんだん上に行くほどに人が降りてすいてきた。
そろそろ自分の目的の階を押さなければ通り過ぎてしまう、と思ってボタンを押したのだが・・・

「あれ?」

ボタンが光らない。
何度押しても光らない。

「そういえば・・・」

エレベータに乗るとき左の列のエレベーターに妙な行列ができていたな。
右の列は全然乗れるにも関わらず、だ。
あの時オレは内心(こいつら馬鹿じゃねえの?)なんて思いながら右の列のエレベーターに乗ったわけだが。
オレが馬鹿だったわけか・・・。

朝の混雑する時間帯は行き先によって乗るエレベーターを変えなくてはいけないようだ。
なんという合理化、先端技術。
うちのトイレの個室にも見習わせてやりたいくらいだ。
いや、ホントに見習われたとしたらそれはそれで困るか。
だいたい5階までしかないのに

「朝は4階までしか行きません。」

なんて言いやがったらパンツ詰まらせてやりたくなるしな。

待て、今はそんな話はどうでもいい。
困ったぞ。まず今の状況を打開しなくては。
原因はわかった。
しかし衆人の見守る中、もう既にオレは行けもしない階のボタンを高橋名人並に連射してしまっている。
この場をなんとかごまかさなくては。
何か言え。こんなときこそアドリブをきかせろ。
そうだなあ、例えばこんな感じだろうか

・押しただけ

・汚れてたから拭いた

・デバッグ作業

いや、どれも不自然だ。
あせるオレを尻目にエレベーターは最後の階へと到着しようとする。
そしてどうしようもなくなったオレは苦しまぎれの言葉を発してしまった。

「・・・無理なのか。」

・・・・ってそれ、バレバレですやん、兄貴。

しかも最後の階だからそれを聞いた人たちもオレも皆一緒にそこで降りることになる。
オレはこれ以上顔を見られるのも嫌だったから真っ先に降りた。
しかしそこは自分の目的の階の6〜7階下だったのだ。
背中に皆の視線を感じながらオレは一目散に階段へと向かった。

続く...


今日の一言

毛利名人とか、あともう一人くらいいたよな。



悪意のない言葉の暴力
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