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社員として

〜 リンダ 〜





「さぁ、仕事の時間だ。」

寝起きの一言を最高の気分でつぶやいて目覚める。
研修中に仕事に使われるようになるということは自分の実力が認められたと考えていいのだろう。

「苦労は実った・・・。」

最高の気分をさらに極上の気分で包んで膨らんだ特大の風船は天にも昇らんとしていた。

わざわざ一駅の距離を歩いて会社に向かいながら、今度こそと心の中で繰り返す。


ジャパニーズビジネスマン


アイアム ジャパニーズビジネスマン



アイアムの後の「ア」が抜けているのかどうかなんてどうでもいい。


今度こそ間違いない。仕事なのだ。
研修ではない。今回はビジネスなのである。


会社に着くとすぐに社長の下へ。

今日、社員契約を結ぶことになっている。
うれしさのあまり完全に浮かれている。
適当に話をして、何枚かの紙が読まれて、話をボーっと聞いて印鑑をついた。
印鑑もうれしいらしく今日は朱肉のノリが最高にいいみたいだ。
まだ十代の、化粧をする必要などない女子高生の決め細やかな肌にあえてファンデーションを濃い目にぬりこんだようだ。

ビッチリとオレの名前が押された。





手遅れだ・・・





え!?


誰かの、それはもしかして俺自身の声かもしれないが、ふと我に返る。
いやな予感というのは当たるためにある。
もう一度労働条件を冷静に思い返してみると次々と驚愕の事実が明らかになった。


まず、研修期間が終わるまでの約2週間。
これはあくまで研修の一環であり給料は出ないこと。

そして、その後3ヶ月の給料は第2の研修のようなもので
手取りは約10万あるかないか。

さらに3ヶ月、その状況で働いて適正があれば通常の社員の給料になる。
無ければ給料据え置きでもう少し様子を見る。


・・・なんとおそろしや。
ようするにまだまだ一人のプログラマーとしては認められていないということである。
では、なぜ急に仕事を与えられたのであろう。
答えは簡単であった。

ようは今までそれを手がけていたプログラマーが派遣で別の会社に行くからである。
会社は締め切り間近に追いやられ、出来るかどうかも不安になってきたプロジェクトよりも 派遣に出して確実に定収入が入ってくることを選んだのである。

そして残されたプロジェクトは研修の人間にやらせて出来ればラッキーということだろうか。

なんとしたたかであることか。
確かに未経験の人間をほいほい研修でとるということは大企業ではない、 中小かもしくは零細企業というやつだろう。
だが、だからこそあらゆる努力をしないとこの時代を生き残れないのであろう。

そして、オレもこの会社くらいしか突破口を見出せなかったのも事実。
ここまで来たらしばらくは文句もいわず働くしかなくなってしまった。


敵はあっぱれであった。
オレこそが持っていたはずの泥にまみれてでも生き抜いていく野生の強さ、
そう、ドブネズミの美しさをもっていたのだ。


続く...


今日の一言

そのうち訴えられませんか?



言葉よりも星の数よりもガードマンよりも
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