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学業と苦悩の日々(前編)

〜 幸か不幸か 〜




オレがプログラマを目指し始めた27歳の夏。
このときオレはプログラムの知識はもちろんのことパソコンに対する知識も浅かった。
昔のめりこんだ時期はあったが当時のパソコンオタクというイメージが嫌いでやめてしまった。
資格もない。
大学もやめた。
他には何があるだろう?
英語も話せない。
音楽は?
いや、音楽で食べていく道も閉ざされた。

まさに何もない。

こんなはずではなかった。
オレは人々がびっくりするような偉業を成し遂げる人間だと信じていた。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
何がいけなかったのか、どこで失敗したのか。
久しぶりに昔の自分を振り返ってみようと思う。


幼年期から小学時代。
場所は普通の公立小学校。
そこで教えられるものは国語、算数、理科、社会。
オレは子供なりに、これができれば得れる将来的なメリットをうすうす感付いていた。
そしてクラスのなかでオレより勉強ができる奴はどうもいないようだ。
オレは特に驚かなかった。
なぜならもっと小さい頃からオレは常に母親に言い聞かされていたのだ。

「お前は本当に頭がいい、賢い子なんだよ。」

何度となくこの言葉を聞かされていたオレは完全にそれが真実であると思い込んでいた。
だが小学校を卒業するとき担任の先生が気になる言葉を残してくれた。

「君はうちの学校では一番勉強ができたかもしれない。でもね、中学校に行くとそういう一番の子が何人も集まってくるんだよ。」

じゃあオレの天下は小学校までなのか。
でもその何人かの一番の中でまた一番を取れればいいな。
オレは素直にそう思った。


中学時代。
ここもまた普通の公立中学であった。
そしてどうやらオレは一番の中の一番だったみたいだ。
どうすれば楽に点をとれるか、テストで結果を残すには何をすればよいか。
そのコツを見抜くのが人より上手だったようだ。
だがその要領の良さは一つの弊害を含んでいた。
椅子にジッと座っていたり勉強することがどんどん嫌いになっていくのだ。
しかし生来の負けず嫌いから、いやいや必要最低限の勉強はしていた。
ただその最小限の労力は的確に要点を捕らえていた。
勉強はますます嫌いになる、だが成績は落ちない。
冗談混じりにだがオレのことを形容するのに「天才」という言葉を使う友達や先生が現れ始めた。
そしてそれは悪い気分はしなかった。
オレはすんなりと地元の進学校に入学することになる。
そしてここでも先生が言っていた。

「いくら君でもあの学校の中では普通の存在なんだよ。」


高校時代。
地元で名の通った公立の進学校である。
この進学校ではオレは確かに普通の存在であった。
成績は約500人の学年で真ん中より少し上といったところだろうか。
話に聞いていたしオレはその事実をすんなり受け入れることができていた。
けっこう長続きしたけどオレの天下もここまでだな。
もう勉強は既に大嫌いだったし、バンドを組み音楽にのめりこんでいた時だ。
週に3,4回のアルバイトも始めていた。
だから成績はあまり気にしていなかったのだ。

だがそんなある日、実力テストというものがあった。
定期テストのように問題の出る範囲がわかっているテストではない。
今まで習ったことの総合的な学力を試すテストだ
これまでの定期テストでオレは相変わらずポイントを抑えるだけの最低限の勉強しかしていなかった。
しかし逆に全ての範囲でまんべんなくポイントを抑えている人間はそうはいなかった。

オレの成績は上位一割に食い込むものだった。
不意に、周りのオレを見る目が変わった。
ここでは成績のいい者が人としても優れているというような感覚がある。
もちろんそんなことを口にする先生はいなかったがそういう空気は確実に存在した。
知らない間にオレもその感覚にどっぷりと洗脳されていたのだ。
そこでオレは一度だけ定期テストでがんばって勉強してみた。
自分の価値を再確認するために。
結果、残念ながら一番にはなれなかったが三番にはなれた。
その噂はあっというまに周りを駆け巡る。
今まで「オレの天下」というのは中学校とか高校の狭い範囲の意味だった。
しかしこうなるとオレの考えは大きく変わり始めていた。

おいおい、ひょっとしてオレの天下は天下に出てもオレの天下なんじゃねぇの?(意味不明)

それから日がたつにつれオレは自分に対する自信を高めていく。
もうそれは自信と呼べるものではなく慢心と言わなければいけない。
学校の授業は比較的好きな数学以外は寝たりマンガを読んだりする回数が多くなった。
ただポイントを抑えるのだけは相変わらず得意である。
5回に1回くらい、今回の授業は大事だなと感じた授業はちゃんと聞いていた。
実際それでなんとかなっていたのだ。

高3の受験シーズン、そんなオレに神様は一度チャンスをくれた。
オレは1回目の受験に失敗したのだ。
周りは口々に言う、なめすぎだと、油断しすぎだと。
ここで何かがおかしいと気付かなければいけなかった。
だが既にその程度で自信を失うような謙虚さはなかったのだ。
そのときの負け惜しみがまたひどい。

採点官が採点ミスしたんじゃないか?

本気でそう思っていたわけだが・・・・今思えばなんてことはない。
勉強嫌いのためギリギリ受かる程度の勉強しかしてなかったのだ。
少しは反省したのか2年目はもう少し学力をつけていった。
でもまだ完全になめている。
受験を?いや、人生をだ。
これでまた落ちていればオレはなにか変われたかもしれない。
だが神様は二度も続けてチャンスをくれなかった。

2年目、オレはいわゆる京大、京都大学に入学した。
結局、それまで一度も塾や家庭教師の世話になることはなかった。
ますます膨れ上がる自尊心とともにオレの京都での生活が始まる。


後編に続く...


今日の一言

あんまり思い出したくないんだよなぁ



エリート意識のなれの果て
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