ついにオレの仕事も最終日を迎えた。 最後の最後まで後片付けや、お客さんへの挨拶などに追われた。 オフィスの人達にも挨拶をして回り、ようやく全てを終えた。 この後も約束があったためにバタバタと会社を出た。 お世話になった部長達と3人で最後の飲み会に行くのだ。 今までにも何度か送別会なるものを開催してもらったりしている。 本社の東京、大阪支社で計2回。 しかも、嫌いな上司が来るなら参加しない、とか言う人がいる。 そういう人達は別途、プライベートな送別会を企画してくれる。 これが東京、大阪でそれぞれあるため合計で4回の送別会があった。 さらに、ここに個人的に飲みに行こうというのが加わる。 最近は否応なく酒まみれだった。 しかし、このオレとそれだけの人が飲みに行ってくれたことが驚きだ。 サラリーマンになるまではあり得なかったことだ。 オレよりもずっとキャリアがある人達が口々に 「また何かの縁があったときはよろしく。」 とか 「次の会社がうまくいったら雇ってね。」 などと言ってくれる。 もちろんそのほとんどが社交辞令とか冗談なのは分かっている。 でも多くの人達が、これからもオレとの関係を保とうとしてくれている。 オレはそれが嬉しい。 プログラマになる前。 オレは27年間も生きてきて、特定の交友関係しかなかった。 バイト先で知り合った友達。 高校の時の友達。 バンドのメンバー。 などなど、ようは利害関係の無い友達だ。 バンドのメンバーに限っては普通は利害関係がある。 自分達のバンドがうまく機能していくようにお互いがコントロールしなければならないからだ。 しかし、オレの場合はそれをしなかった。 とにかく仲の良い友達以上の関係にはならなかったし、なれなかった。 あれから4年。 オレには利害の絡む知人がたくさんできた。 会社で知り合った人なんていうのは、ほとんどそうだ。 お互いが自分の仕事のために情報交換しようとする。 定期的にお互いの近況を聞いて、いい関係を保とうとする。 それは何かチャンスがあったときにそれを得るためであり、困ったときに助けてもらうためである。 お互いが利用しあえる関係になりたいと思っている。 オレは仕事をするまではこういうタイプの知人がいなかった。 作ろうと思えばできたはずだ。 バンドを組んでいるのなら、他のバンドともっと交流を持てばよかった。 事務所の人にもっと近づいて、本音で語り合える関係になればよかった。 だが、オレはそういう利害関係を嫌った。 変なプライドが邪魔をしたのもあるだろう。 何か自分の卑しさを見抜かれそうで嫌だったのだ。 だけど、サラリーマンになってみて、外資系の企業に行って、その感覚は変った。 みな、利害関係があることなどある程度前提として付き合いをしているのだ。 そんなのは当然のことで、その上でどれだけ気が合うか。 いい友達になれるのか、という見方をしている。 それを卑しいとか、計算高いなどと思う人は少ない。 生きていくとはそういうことだという感覚みたいなのがある。 堂々と利害を意識して人付き合いをしていけばいいということだ。 利害を度外視して人付き合いをしていくということはだ。 それはある意味、自分の好き嫌いのみで人を選別しているということだ。 結果として一緒にいて楽な人だけを選り好みしてしまう。 下手するとそれは、自分が努力しないことを許してくれる友人達になりかねない。 相手もそういう人の方が楽だと感じるからだ。 晩年にはそういうフローライフを満喫してみたいとも思う。 しかし、今のオレはダメだ。 ていうか、スローライフなら27歳までに十分満喫してきた。 今のオレはそれを挽回しなくてはならない。 そのためには、一緒にいてこちらがいい刺激を受ける相手を求めていかなくては。 この人も楽にやってるし、自分も楽でいっかぁ〜、と感じるような相手とは距離を置くべきだ。 もちろん、全ての人にそのほうがいいと言っているわけではない。 27年間のスローライフを過ごしたオレだからこそ、そうしなくてはならないのだ。 そんなにしんどい人生を生きて、明日死んだら後悔するぞ。 その論理もわかる。 でもオレはそんな奴にあえてこう返したい。 そんなに適当に生きて10年後、自分がまだ死ねてなかったら後悔するぞ。 明日死ぬ可能性と10年後もまだ生きている可能性。 どっちに賭けるかは人それぞれなのでお任せするが。 少し過激な書き方をしたけど、これはあくまでオレの中での決意だ。 今まで受動的に人間関係を流してきたオレに。 これからは積極的に利害も意識して人間関係を構築していけよと。 せっかく、これだけ多くの人がオレの次のチャレンジを応援してくれた。 今後もよろしく、と言ってくれた。 そのような人達に、やはりオレからも「よろしく」という態度で返さなければ。 技術的な面以外に限るが、この会社は本当に勉強になった。 いつかお返ししたいと思う。 起業準備編 終了 今日の一言 次回から新章突入!最終章となる!? |