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終盤戦

〜 母なるナイルは僕らの味方 〜





研修を始めてから早くも2ヶ月ほどが過ぎた。
前に出された掲示板の課題も一応は動いていたのでなんとか
及第点をいただいたようだ。

最近はというと課題をもらいにいったとき、
先輩からにじみ出るあの嫌そうなフェロモンに耐えきれず
自分なりにやりたい課題をみつけて勉強しているという感じだった。

言い方を変えれば、そう、中だるみである。

それまでは毎日研修後にも家で勉強していたのだがここ数日は
家で本を開くことが少なくなった。
大丈夫なのだろうか?

オレがこれほどまでにだらけてしまったのにはもう一つのわけがある。
双頭竜の片割れ、そう、隣の後輩だ。

後輩は明らかにオレほどには頑張っていない。
それゆえ、最近は彼のわからないところをオレが教えてやる機会が多くなってきた。
首は別といっても胴体は同じだから無視するわけにいかんのだ。

だが教えるといってもそこは一心同体の2頭(いや、1頭?)。
時には世間話、時には女の話、ジョークソフトを作ったり、たまに真面目にやったり。
そんなふうに一緒にしゃべりながら多少プログラムに取り組むというスタイルが
とても楽しく感じられたのだ。

いつもいつも快楽に押し流されてきた歴史を持つオレ。
最後の1ヶ月はこんな感じでもいいんじゃないかな?
とか思っちゃう未来なんてごく簡単に導き出せる。

オレにとって快楽とは決して逆らうことの出来ない
母なる大地、母なるナイル川なのである。
その洪水は時に甚大な被害をもたらすが、ナイルの民が生きていくために
欠くことのできない富をももたらしてくれる。

今でも目を閉じて過去を振り返ると、
母なるナイルの引き起こした数々の甚大な被害が思い出される。



ん?


富は?

欠くことのできない富はどこにあったのだろう?


・・・あれ?

も、もしかして流されてただけ?
洪水に、欲望に流されてただけ?


・・・・・・・・。

・・・大変なことに気付いてしまった。
どうやら、うちの母なるナイルは適度の氾濫によって豊かな土壌を与えてはくれないみたいだ。
毎年毎年、手のつけられない大洪水で多くの家屋や人、家畜が流されるだけのようだ。

双頭竜とか言ってる場合ではない。
すぐに気持ちを切り替えて、自我を引き戻さなくては。

しかし、、、もうすでにオレの身体は相当下流まで流されていたようだ。
毎朝パソコンを立ち上げるとともに話のネタになりそうなニュースを探し始める始末。



まずい、これは非常にまずい事態だ。


何が一番まずいって他ならぬオレがそれに気づいていないということだ。
今思い出すだけでもハラハラドキドキものだ。

うゎ、なんかインベーダーとかやってるし。

あぁ、やっぱりタイムマシンが欲しい。こいつぶん殴りてぇ〜。



しかしだ。


母なるナイルは見捨てなかった。
ほんの少し、自分の本分を忘れてほんの少し「プロ道」からそれてしまったオレを
愛の平手打ちで引き戻してくれた。


3ヶ月の研修期間があと2週間ほど残っていたときだ。
社長が部屋に入ってきて言った。


社長:「ukkyo君、そろそろ仕事に入ってもらうから。」


氾濫である。

母なるナイル、大氾濫である。
あふれかえる水。
いきり立つオレ。


社長:「早速、明日くらいからやってもらうから。」


え?


このときオレの身体が敏感に何かを感じ取り、なぜか身震いした。

しかし、プログラマーになると思い立って約3ヶ月、がむしゃらに、
ただがむしゃらに、最後のほうはちょっとあれだけど、それでも頑張ってきたオレは
完全に舞い上がっており、その身震いを武者震いと勘違いしてしまった。

やはり世間は甘くないのだ。


もちろん事の顛末はこの先ここでぶちまけさせてもらう。
しかし、この研修生活に限っては一応ここでハッピーエンドを迎えたということにしておきたい。
どうか、そうさせて下さい。




研修生活 完


今日の一言

母なるナイルは社長の味方・・・



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