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初日(前半)

〜 競争社会 〜






来た。

待ち望んだ、朝。

研修の初日だ。

緊張して前の晩はあんまり寝れなかった。
というよりも今まで朝まで夜更かし(?)して朝から寝てたからいつも通りなわけだ。
それでもきっちりと時間に余裕をもって起きて、ゆっくりと用意したかった。

エレガントに自分の第一歩の感触を味わいたかったからだ。
2,3時間しか寝てないが目はしっかりと覚めた。
布団から出た。
肺一杯に吸い込んだ空気は今までの寝る前のそれとはまるで別物だ。

これが今後の基盤サイクルになる。
身体に染み込ませるように、なじませるように一つ一つを確認しながら用意していく。


おちついて軽い朝食をとり、

ゆっくりと歯を磨く。

さっそうとスーツに着替え、

優雅に身だしなみを整える。


会社までは電車で一駅、歩けば約30分だ。

オレは迷わず歩くことを決めていた。
まるで映画のワンシーンのように人ごみを縫って歩く自分を、
間違いなく好きになる自信があったのだ。


家を出る。

ゆっくりと歩き始める。

夏(8月)なので朝といえども日差しはきつい。
上下スーツを着込むのは結構大変だが、その大変さがさらに心地いい。

自分の歩いている晴れ姿をすれ違う人全員が見ているような気がする。
歩いてよかった。電車じゃなくてよかった。
こんな気分を30分も味わえるなんて。


「ジャパニーズビジネスマン。」


「まさにジャパニーズビジネスマン。」


このとき、確かにジャパニーズはジャパニーズだがビジネスマンではなく、
ただの研修生だということは完全に忘れていた。
給料などないのである。ビジネスではないのである。

それでも意味のわからないこの名言を心の中で繰り返すオレ。
きっとこれを読んでる人もそろそろウザいだろう。
だがご心配なく。
その名言はもっとありふれた、日常的で陳腐な言葉にさえぎられることになる。

時計に目をやったときだ。


「やべぇ、遅刻する。」


あまりにも優美な朝のひと時、その代償はけっこう高かった。

急ぎ足で会社に向かうが、まずい、ホントにぎりぎりだ。
どうする、走るか?でも汗だくになるのもどうかと思う。
なんとか早歩きで行けば間に合いそうでもある。
頼む、間に合え!

朝の通勤タイム。
たくさんの人の群れは、聞いていた通り確かにみんな早足だ。
だがオレだけなぜか競歩並みに早い。
見る見るうちにみんなを追い抜いていく。
これはこれで気持ちがいいな、とかそんなこと思ってる場合じゃない。

泣き言が次々にあふれ出す。


「暑い、上下スーツは暑いぞ〜。」

「しんどい、電車に乗ればよかったよ〜。」


会社にたどりついた時、まさに時計の針は出社時間ちょうどを指していた。

ドアを開けると社長と能力開発機構だのなんだのいう(職安とつながった組織?)
ところの人がすでにそこにいた。

遅れたわけではない。
でも少しの気まずさは確かにある。

しずしずと席に着くのであった。


続く...


今日の一言

(自分に)酔っ払うのはほどほどに・・・



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