第3関門・・・ペーパーテスト |
ペーパーテストってそんなのあるのか。知らなかった。 すでに減点材料が積み重なっている以上ここは絶対に落とせない。 ペーパーテストってなんだろう。パズル風のIQテストみたいなやつだろうか。 それともバリバリ業務知識を要求するようなもの?そうだったらアウトかもな・・・。 あらゆる想像が頭をよぎり、期待や不安が押し寄せる。 とにかくここまで来たらやるしかない。 「自分を信じろ。」 心の中でつぶやいた。 ありふれた言葉だが、いざというときには多少の効果はあるようだ。 目の前に問題用紙が置かれた。 一つ、心臓が大きな鼓動を立てる。 緊張が走る。 社:「それでは始めてください。」 問題用紙をめくると、そこに並ぶ問題は 国語、英語、数学 いわゆる受験勉強をさらに易しくした感じだった。少しホッとした。 難しいことは覚えていないが家庭教師や、塾の講師の経験がある。 基本的な部分はまだまだ頭に残っているはずだ。 一番恐れていた 「CPUのクロックがうんたらかんたら・・・・」 なんて問題じゃないというだけでずいぶん救われた。 だがやはり人間というのは忘れる動物である。 しかも自分が以前面接で落とされた経験があるということすら忘れているこのオレなのだ。 「理論」の対義語が即答できなかったことくらい大目に見てほしいと思う。 そんな感じで以前ならスラスラできていたはずの問題と悪戦苦闘しながらもなんとか思い出し、答えていく。 そんなおり、ようやく得意科目の数学に差し掛かった。 ようし、これで安心だと思ったのも束の間。積分問題である。 一瞬でマズイ、という空気を察知した。 いわば草食動物が肉食動物の鋭い視線を敏感にキャッチした、とでも言おうか。 問題自体は積分の基本問題なのだが何しろ自分は文系出身ゆえあのマーク「∫」とあんまり親しい間柄ではなかったのだ。 問題はわかる。積分結果がどうなるのかもわかる。ただあのマーク「∫」の使い方を忘れたのだ。 くそ〜あと少しなのに、あのマーク「∫」め〜。 ・・・・・仕方ない、最後の手段だ。
・・・・・そう、日本語である。 あのマーク「∫」の代わりに積分した式をg(x)とするとである。 これが一体どういう評価を得たのかはわからない。だが数日後、オレは研修生として採用されたことを通知する電話を受け取ることになる。 もともと給料ももらえない研修生だ。 適性がないと(要するに使えないと)判断されればいつでも切られる立場なのだ。 誰でも入れたのでは?という説もある。 だが人生には時としてみっともなくとも恥を忍んで、泥にまみれてでも掴みとらなければいけないものがある。オレはそう思っている。 なにはともあれ、いよいよ研修生活が始まる。 それまで自分がそろそろ寝ようかと思っていた時間(午前7時)に起床する生活が始まるのだ。 ここからすべてが変わる。変えてみせる。 オレがあと10歳若ければ、夢という言葉で装飾されていたであろう。 しかし今27歳のオレにとって、この夢がかなうかどうかは超現実問題なのだ。 まず、階段の1段目を上れた自分を今日は褒めてやりたい。 今日の一言 ところであのペーパーテスト、何点だったんですかね? |