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確定!続・大阪物語(第9部)

〜 U氏との対談(第1戦) 〜



いつも通り定時までの仕事を終えたオレ。
ふと携帯に着信が。
U氏だ。
そう、今日はいよいよU氏との談判の日。
ロビーで待ち合わせ、とりあえず2人で京都へ戻る。

今日の話し合い。
実はオレには特にメリットの無いものなのである。
なぜならU氏は別に会社の代表としてオレと話をするわけではない。
U氏をどう説得したとしてもオレが正式に会社を辞めることにはならないのだ。
社長に話が行く前にオレを説得しようと思っているのだろうか。
だが、それでもとにかくお世話になった人であるので今回話し合いの場を持つことに同意したのだ。

京都に戻ると喫茶店で話をすることになった。
オレは風邪を引いており声もかすれた状態だったので酒を飲むのは無理だろうということだった。
いや、その前に今日は酒抜きで話をするつもりだったのかもしれない。

話はまずU氏の第一声から始まった。

U氏:「今日は別に君を引きとめようというつもりではないんだ。」

オレは驚かない。
営業の真似事を若干かじったことのあるオレだ。
それが相手の不信感を拭うための、セールストークの基本であることを知っていたからだ。
オレは一通りU氏の話を聞いた。
だが、どんな話をされようがオレの心はもう動かない。
電車の窓から見る景色のように、U氏の言葉は空しくオレの横をすり抜けていくのみ。

オレは落ち着いて、自分の持つ悩み、目標をそのままU氏に話した。
その悩みを解消し、目標を見失わないためにはもう辞めるしかないことを。
自分の中ではすでにいつ辞めるか、それだけの問題であることも話した。

今の派遣先での契約は9月末まで、それまでは辞めることはない。
だからそれほど急いでいないこともあり、オレは積極的に次の会社を探していない。
オレの方に自信を持って自分を売り込めるだけの用意がまだできていないということもある。
次に何をやるかは未定だが今の仕事の延長だけの範囲に限りたくない。
そのためにはもっと広い、もしくは深い知識や技術が必要だ。
英語もいるかもしれない。

次の会社をまだ探し始めていない、ということは少しU氏を安心させたようだ。
本当はそんなものないのだが、まだ説得の余地があると感じたのだろう。

風邪気味のオレはホットココアをすすりながらU氏の話に耳を傾ける。
しかしこうやって話したことがなかったから気づかなかったがU氏もいろんな悩みがあるようだ。
U氏はもう40歳手前で、転職という選択肢は考えていないらしい。
だから今の会社で何とかやっていくために頑張っているということだ。
そして会社が今のままではダメだと感じているのはオレと同じらしく何度も社長と議論しているようだ。
そしてこれはオレも感じたことだが

社長には話が通じない

この結論に至った。
非常に同感できる。
オレはU氏の気持ちが痛いほどわかる。
ここまで話し合いをしてきて、オレはとうとう本音を。
今まで恐らく誰にも言わなかった(酔ってしゃべったかもしれないが)事を言った。

オレはあの社長を喜ばせたくないのだ

どうしてもそんな気になれない。
社員には技術力をつけろと言う、資格も取れと推奨する。
しかし資格に対する補助は一切ない、試験代も出さない。
セミナーの参加費も出さない。
それなのに辞めると騒ぎ出したら給料を上げるなりして引きとめる。
辞めると言えない人の給料は上がらない。
どうもこの辺のやり方が好きではないのだ。
オレが会社に貢献することで結果としてあの社長が喜ぶだろう。

だからオレは貢献したくないのだ

自分の会社やその社長を悪く言うのは自分を悪く言うのと同じだ、と教えられてきた。
誰に教わったか忘れたが母親だったろうか。
こういうことは大体母親に教わってきた。
そこで働いている自分の価値をも低くする行為だ、ということだ。
そして自分は裏表のある人間だということを宣伝しているようなものだと。
だから誰にも言わなかった。
しかし心の中にずっと引っかかっていて、もう我慢できずに漏れ出してしまったのだ。

U氏はオレの気持ちを受け止めてくれ、この日の話し合いはここまでとなった。
またちょくちょく話をしようと。
オレもU氏との対談の中で為になる話もいろいろ聞けたので喜んで承諾した。
ただ、それでもオレの気持ちが変わることはないだろうが。

続く...


今日の一言

本音を引き出したU氏の勝ち??



U氏との第2戦に向けて
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